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【解決事例】長年世話をしてくれた長男とその妻に財産を託すための公正証書遺言書作成事例

2026.08.10

1. 状況

相談者は90代の女性。年齢を重ねるにつれ、将来のことをきちんと決めておきたいという思いが強くなり、公正証書遺言書の作成を希望されました。長年同居して身の回りの世話を続けてくれた長男に、これまでの感謝を込めてすべての財産を託したいというのがご本人のご意向でした。

また、もし長男が自分より先に亡くなってしまった場合には、同様に長年寄り添い支えてくれた長男の配偶者(長男の妻)に財産を承継させたいという希望もありました。ところが、長男の妻は現時点では法定相続人ではないため、そのままでは遺言書の内容を実現できません。そこで、まずは長男の妻を養女とする手続きを行い、そのうえで遺言書を作成する流れをご提案しました。

なお、依頼者にはもう一人、別に暮らしている娘がいましたが、遺言内容には異議を唱えることなく「弟夫婦を大切にしてほしい」との母の思いを尊重してほしいという気持ちを、付言事項として遺言書に記すこととなりました。

2. 相続手続きの設計

今回の手続きの目的は、依頼者の希望どおり、長年寄り添ってきた長男夫婦に安心して財産を託せるよう法的に確実な形を整えることでした。

まず初めに、長男の妻を依頼者の養女とするための養子縁組届を市役所に提出していただきました。これにより、長男の妻は正式に相続人の一人となります。その後、公正証書遺言書を作成する準備に入りました。戸籍謄本や印鑑証明書などの必要書類の収集はすべて司法書士事務所で代行し、依頼者は当日、公証人役場で署名押印を行うだけで手続きが完了するよう段取りを整えました。

相続対象となる財産は、自宅の土地・建物と預貯金が中心でした。いずれも長男夫婦が今後も生活していく上で重要な基盤となる財産です。遺言内容としては、すべての財産を長男に相続させ、もし長男が先に亡くなっていた場合は、代わって養女となった長男の妻に相続させるという二段構えの遺言としました。

また、遺言書には「子どもたちが互いに助け合い、仲良く暮らしてほしい」という母の思いを込めた付言事項も記載し、遺言の背景にある温かい気持ちが伝わるよう配慮しました。

作成当日は、公証人役場にて公証人と司法書士、事務所で手配した証人1名の立会いのもと、内容の最終確認と署名押印を行い、公正証書遺言書の作成が無事完了しました。

3. 相続手続きを行うメリット

今回のように公正証書遺言書を作成しておくことで、将来の相続に関するトラブルを未然に防ぐことができます。特に、高齢の依頼者にとって、相続人間の不公平感や誤解から争いが生じることを何よりも避けたいという思いがありました。

公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、法的な有効性が高く、家庭裁判所での検認手続きも不要です。これにより、遺言の内容を迅速かつ確実に実現することができます。

また、今回のように養子縁組を行ってから遺言を作成することで、「世話になった人に財産を譲りたい」という依頼者の思いを、法律上も明確に反映させることができました。

結果として、依頼者は安心して老後を過ごせるようになり、長男夫婦も「母の気持ちをしっかり受け止めたい」と心の準備を整えることができました。さらに、別に暮らす娘も、母の意思が明確に示されたことで安心し、家族間の信頼関係がより深まる結果となりました。

4. まとめ

本件は、公正証書遺言書の作成により、依頼者の希望を法的に確実な形で残すことができた事例です。特に、養子縁組という一手間を加えることで、血縁関係のない長男の妻にも相続権を持たせることができ、「お世話になった人に託したい」という依頼者の想いを実現しました。

遺言書の作成は「まだ早い」と考えがちですが、元気なうちに作成しておくことで、財産を誰に、どのように引き継いでほしいかを明確にでき、家族に迷惑をかけない安心感を得ることができます。

相続手続きは法律の専門知識を要する複雑な分野ですが、司法書士などの専門家が関与することで、依頼者の希望を正確に形にし、将来のトラブルを防止することが可能です。

本事例のように、公正証書遺言を活用することで「想いを確実に伝える」ことができます。相続に関するお悩みや将来への不安をお持ちの方は、ぜひ早めのご相談をおすすめします。

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この記事を担当の執筆者
サンセントラル司法書士法人 代表 中山 学史
保有資格司法書士
専門分野相続、信託
経歴明治大学法学部卒業。平成24年司法書士試験合格。司法書士事務所勤務を経て、平成25年司法書士事務所開設。遺言書の作成や相続問題に精通した弁護士、税理士などの専門家とネットワークを構築し、不動産相続案件を専門に活動している。  最近は民事信託を活用した相続対策を行っている。 「身内の相続で揉めない悔やまない50の処方箋」(中央経済社)を共同で執筆。
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