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相続税の納税資金の考慮

相続対策でこれまでよく採用された方法に、無理な借金により、貸しマンションやアパートの建築をして財産評価額を下げるという方法があります。

この方法には「借金の金利の上昇」「空室」「老朽化」といった賃貸経営のリスクが伴い危険だと言う専門家も少なくありません。

そういう意味では、財産評価額を下げる対策ではなく、納税資金に換価できる資産、不動産を用意することによる、納税資金準備対策が重要でしょう。

換金性を高めた資産などを生前から準備しておき、相続発生後に直ちに換金することで相続税を納付しようとするものです。

特に換金しにくい不動産等を現金化しやすいような資産構成に代えておくことが代表的です。

相続税課税時点において、納税義務者(特に奥様などの配偶者)に換金性の高い資金が分配されるような配慮を、遺言書で記載しておくことなどで実現できます。

これらは、資産を残す側が、納税義務者となる人の困りがちなケースを想定して、最低限やっておかなければならないことと言えるでしょう。

更地など換金性の高い資産でも、不動産の場合は、その売却手続に時間がかかってしまうことが多く、また、譲渡所得税等の発生の問題もあります。

相続税を物納を検討するとしても、物件自体が物納要件を満たしていることが求められ、更に認可手続に時間がかかってしまいます。※物納が認められないといったケースが多く、その場合には現金で支払わなくてはならず、万が一納付期限が過ぎていれば、延滞税が別に課せられます。

つまり、相続対策としては、財産評価を下げる節税対策の他に、相続税納税資金の準備が非常に重要な問題となっているのです。

納税資金が足りない場合の対策

いくつかの納税資金対策をご紹介します。

ただし、先に申し上げましたように、リスクが伴うものもありますので注意が必要です。

短期的なものとしては、

1)銀行から借入する
2)死亡退職金・弔慰金を活用する
3)相続資産の売却する
4)納税資金の生前贈与をする
5)延納・物納を利用する

があります。

出来る限り計画的に、長期的な視野で取り組まれることをお薦めします。

長期的な対策として、計画的に取り組めることの代表例を挙げますと、

1)生命保険に加入する
2)土地活用により賃貸収入を得る
3)賃貸用不動産を譲渡する

どれも信頼できる専門家にアドバイスを求めて取り組むことをお勧めします。

納税資金の過不足分析

必要となる納税資金に対して、相続財産と相続人所有の金融資産(現預金・生命保険金・上場有価証券等)がいくら準備できるかを試算し、相続税を支払う能力があるかチェックすることが出来ます。

不足していれば、対策が必要でしょう。

一般に、相続税の支払能力の判定は、

納税資金÷相続税×100

で求めます。

この比率が100%よりも小さければ小さいほど対策が必要です。

納税資金の不足を解消するためには

(1)節税対策により相続税額を軽減すること
(2)納税資金対策により資金を増やすこと

の両面からのアプローチが必要です。

納税資金対策では「生命保険」の上手な活用が最も有用です。

終身保険の有期払いで加入すれば、確実に死亡保険金を相続税の納税資金に充当できます。

支払保険料は相続税の分割前払いと考えることもできます。

これにより、所有土地等を譲渡または物納することなく、相続税の納税を完結させることもできます。

この記事を担当の執筆者
サンセントラル司法書士法人 代表 中山 学史
保有資格司法書士
専門分野相続、信託
経歴明治大学法学部卒業。平成24年司法書士試験合格。司法書士事務所勤務を経て、平成25年司法書士事務所開設。遺言書の作成や相続問題に精通した弁護士、税理士などの専門家とネットワークを構築し、不動産相続案件を専門に活動している。  最近は民事信託を活用した相続対策を行っている。 「身内の相続で揉めない悔やまない50の処方箋」(中央経済社)を共同で執筆。
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